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「品と格と色気」

作る仕事をはじめてから、父からよく言われた。
作るやきものに、「品と格と色気」のどれかが欠けてもだめだと。
「格」は若い時には厳しいが、意識を持っているかが重要である。「品」は生まれ、育ちが大きく作用するが、お付き合いの加減で磨くことも可能だと。「色気」に関してはわからんわと。遊び人になればよいのかではない。歌舞伎の世界でもよく言われることだが、技術を磨く以外に、仕事の向上のためどう生きてきたかが重要で、職種によって立場によってそれぞれ異なり、必要でない生き方もある。
私は当初からこのことを意識してきたせいか、そんな匂いのするやきものが好きである。歴史に残る陶芸家の作品や名品と言われるものの中でもすべてが私の嗅覚に合うものばかりではない。品が飛びぬけているもの、格が重苦しいもの、色気が出過ぎているもの様々である。それらを求めてきたコレクターの方々は、自分の生きざまに合致した何か、あるいは自分にない物を感じて手に入れてこられたんだろうと思う。

しかし、最近は新たなジャンルの作り手と買い手が出てきた。品と格と色気に加えて「お洒落」である。洒落っ気ではなく「オシャレ」である。日本のやきものの世界に近年に確立された世界だ。生活様式、食生活の違いから生まれたもので必然である。江戸時代にパスタ皿やカレー皿はなかったのだから当たり前である。逆に言えば今まで和陶で代用してきたものに、やっと日本由来のオリジナルが産まれたと言えるのかもしれない。
今後も新しいジャンルの器が国内から、また海外からも要求されることを期待したい。

日本の工芸の世界でガラパゴス化、絶滅保護の立場に追いやられる技術もあるかと思うが、私の好きな匂いのするやきものは今後も「枠」として保たれるだろう。
石黒宗麿さんの世界を超お洒落と思い、備前の徳利に斑唐津(まだらからつ)のぐい呑み片手に、織部の向付に鯛や鮪、古染にてっさもいいなぁ、伊賀の花入に野草が一輪、そんな空間で一杯やる幸せを世界中の人に布教していきたいものだ。

「品と格と色気」
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