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一升飲んでも酔ったふりができなあかんぞ
まだ高校生の頃、叔父から聞いた話である。法事の宴会で、商売人の取引の中での教訓だったのだが、真に受けてお酒が飲めるようになるや実践してきてしまった。体質的に無理な方や、お酒を飲むと自分がコントロールできない方、最初に嫌な思いをした方は仕方がないと思う。しかし、私はこの一言のおかげで、そのレベルまでいきたいと思ったのである。単純である。最初は体質的にもそんなに飲めたわけでもなく、何度も失敗を繰り返しながらも鍛えてきた。救急車で運ばれたことも一度や二度ではない。反省はしても学習しない。やきものの技術の修練と同じである。反復練習でしか身につかない技術である。その上に人間味を重ねていく。
酒場道。陶道。先ずは基本の習得。その先は厳しい道である。料理の味や、お酒の味はこれまた厳しい道がある。昭和な酒場でしか学べないことは多々あった。
そんな昭和な飲み方をしていた二十代のころ、若い陶芸家20人ほどを集めて師に高級フレンチでお昼をご馳走になったことがある。乾杯のビールの時に「猪飼」と呼ばれ立ち上がると、「お前はあちこちで酒ばっかり飲んでるらしいな」と言われた。そして続けて生ビールのグラスを片手に「わしはこのおかげで人生楽しかった。これが飲めへん奴らは人生半分損しとるな」と。免罪符をいただいた。
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