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口づくりのはなし
ある方の見解である。
日本のやきものと、海外のガラスも含めた器の口づくりの違いのはなしである。特に液体を入れ、直接口をつける、ぐい呑み、湯呑、ワイングラスなどの器の口づくりだ。口とは、中の液体が口に入る境界線である。しかし、そこは線ではなく、数ミリの厚みがある。その数ミリにどれだけの神経を使うか、どれだけの思いを込められるかが作家の仕事であり、そのことに日本の陶芸家たちはかなりのウェイトを置いている。ぐい呑みや、抹茶茶碗はそこが命といってもよいぐらいである。
工業製品なら仕方がないが、海外の高額なグラスでも、日本の量産のやきものでも、そのほとんどがただの境
界線である。それはそれでよいのだが日本のやきものの中には、ただの境界線ではなく、また飲みやすいか飲みにくいかではなく、そこに作り手の意識が込められたものがあるという話である。
徳利の口のところでも話したが、上品かどうかだけではなく、時には下品に、時には艶めかしく、時には切れ味が欲しい気分のこともある。だらしない口でもよい時もある。著名な陶芸家へのインタビュ―で、「良い口づくりとは?」との質問?愚問?に対して、「飲みにくい口がよいんじゃ」と返されていた。意識のある陶芸家はそこに全てをかけているといっても過言ではない。
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