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叶った夢、次の夢

数年前、アメリカに住む日本人女性の方からメールをいただいた。たまたまSNSで繋がったのである。私の器を日本で気に入って購入され、アメリカに移られた際にも大切に持って行かれたとのこと。そしてアメリカでの生活が辛い時、苦しい時に、その器に料理を盛ることで勇気と元気をもらえたとの内容でした。その後結婚されてお子さんにも恵まれ、幸せに暮らしておられるようで感謝してますとのことだった。
とても嬉しいメールで私自身も勇気づけられ涙が出た。

私も若いころに、美術館でのガラス越しではあるが身震いする作品に出会ったことがある。なんでもない組皿だったが轆轤の力と釉薬の渋さに感激し、こんな作品が作れるようになりたい、ひとりでもよいから自分の作った作品を見て勇気づけられ、明日も生きようと思っていただければ本望だとさえ思った。
その夢が叶った。辛くても仕事を続けてきてよかったと思った瞬間である。そして次の目標を探しはじめた。

数年後、偶然にもその方とお会いできた。ご家族で東京に旅行に来られた日が私の東京での個展の最終日と重なり、私のSNSを見てタイトなスケジュールのなかをお越しいただいたのだ。ご主人が是非行こうと言ってくださったようである。改めて感謝の気持ちを告げられたが、私こそ感謝である。頑張ってきた自分を褒めていただいたようにも思った。目頭が熱くなった。
次の目標が決まった。こんな方をもっと増やそうと思った。有名になりたいとか、高く売りたいとかではない。若い時にガラス越しに見た、あの何でもない鉢のような仕事をこれからもずっと探り続けることが大切で、真摯に土にむかっていないとそんな仕事を残すことはできない。

叶った夢、次の夢
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