top of page
< Back

定窯の白磁についた指紋

30代の頃だったか、東京のギャラリー主の方に、大阪の骨董屋さんで定窯白磁の一品ばかりの展覧会があるので見に行かないかとお誘いいただいた。以前に作品を作らせていただオブジェ作家の方と京都の泉涌寺で作陶されているオブジェも作られる大先輩と見に行った。確かに完品の大作ばかりである。メンバーを見てか、お店の方がガラスケースから出してくださり、一点一点手に取らせていただいた。

その時点でオブジェ作家のお二人も東京のギャラリー主もテンションが相当上がっている。土のこと、彫のこと、釉薬、窯、伏せやきかどうかなど、その場で討論がはじまった。私も骨董はそこそこは見ていたが内容がマニアック過ぎて参加できなかった。必死で話をされている三人の姿は、店の中で異様に感じるぐらいだった。かなりの大鉢を割れない様にクッションの上にひっくり返して見ているときに、引き締まった高台の外側の土に指紋の痕を見つけられた。その指紋は作業のどの工程でついたのかさらに議論が白熱していく。確かにうすくではあるが指先の指紋の痕がくっきりとついていた。1000年前の名もなき陶工の生きていた証でメッセージだと、悠久の歴史ロマンとなり話は終わった。帰り道も皆さんはそのことで感動されていた。
オブジェ作家の方は骨董には興味がないんだろうと思っていたが全く違った。相当なやきもの好きである。マニア、オタクレベルである。

私もあの激論に加わりたかった。もっと、やきものオタクにならないとだめだと思った。
単純かもしれないが、それから週に2~3回骨董屋街をうろつくようになった。

定窯の白磁についた指紋
bottom of page