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潔い仕事 料理とやきものの共通点
やきものの仕事を大きく分けると、加飾の仕事とそうでない仕事の二手に別れると思う。
私の仕事はどちらかというと後者である。瞬間芸のようでもある。一概には言えないが、切子と吹きガラス。油絵と書。フレンチと鮨。これらに擬えられるかもしれない。
加飾の仕事は、一点を仕上げるのにかなりの時間を要する。漆芸なんかもそうである。
どんどん完成度が高まっていく。だから数は作れない。それに比べて私の仕事は数はできるが、良い物は沢山作らないとできない。その確率を上げるために数をつくり、技術を磨き、さらにその確率を上げていく。
私の仕事は和食の中でも鮨の仕事に近い気もする。シンプルだけど、だから難しい。僅かな差しかないが、その僅かを乗り越えるのが大変である。鮨職人の方ともよく話す機会があるが、この世界では「潔い仕事」というのも大切なキーワードであると聞いたことがある。シンプルにするためにそぎ落としていく仕事は、潔くないと迷いが形に表れてきてしまうのだ。
スポーツ選手は大会前やシーズン前に調整をして、本番に最高の状態を持ってくるといわれる。プロならずっとキープできないものかと思っていたこともあったが、一流選手でもシーズン中にはスランプもあるだろう。
私の仕事も確率を上げるために日々努力をしているが、最高のパフォーマンスが出せるように精神の部分でも調整していかないと良い作品は生まれてこない。空いた時間にちょこっと仕事して最高の物ができるのなら楽なのだが…。年を取ると若い時のように自分のことだけ考えて仕事ができなくなってくる。用事が増えると調整も難しい。しかしそんな状況でも短期間で調整し、最高のパフォーマンスができる状態に持っていくことも修練しないといけない。潔くいきたいものである。
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